薗部寿樹 教授
日本史学科
Profile
教授 | 薗部 寿樹 (そのべ としき) |
担当科目 | 日本史概説2、日本史講読2、日本史特殊研究2、日本史演習2、地誌学、地理学1、史学実習、教養ゼミ、卒業研究 |
最終学歴 | 筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科史学専攻1989年単位取得退学 博士(文学)【筑波大学】 |
専門分野
日本中世史。村落社会史。
研究テーマ
(1)村落内身分の研究
村落史研究の一環として、村落社会における身分のありかたを考察しています。従来、前近代社会における身分の問題は、被差別身分の問題が中心でした。村落における多様な身分の問題については、個別的な指摘はありましたが、問題としてはほとんど採り上げてこられませんでした。そこで、村落における中心的な存在である住人、村人(むらうど)、座衆という身分を多面的かつ具体的に解析しています。このような身分を「村落内身分」と名づけて、その特質を村落集団、村政、村落財政や村落祭祀など村落生活の諸側面との関連から考察しています。さらに住人、村人、座衆以外の身分や百姓という公的な身分についても研究をすすめています。
(2)村落神話・村落祭祀儀礼の研究
中世村落には、その成立に関して村落民が唱え信仰している村落神話があります。村落神話は、中世村落の草創・開創神話であり、かつ開発神話でもあります。村落神話は、中世の祭祀組織(宮座)によって伝承し維持されてきました。近世の村落開発は世俗的で、ともすれば特定の有力農民の家に固着する形で、外部に村落の権益を主張するために語られる草切り伝承です。これに対し、中世の村落神話は宗教的で、村落集団の内部に向かって演劇的に繰り返される集団記憶なのです。村落神話研究は、従来、史料的に解明が困難とされてきた中世民衆の心性を探るうえで、非常に大きな力になると思われます。この村落神話を具体的な場で多面的に発掘し解明すべく、研究をすすめています。またこの村落神話を再現する場である村落祭祀において、どのような儀礼がおこなわれていたのか、そしてそれにどのような意味があったのかについても、村落神話の解明とあわせて、考察しています。
(3)村落財政の研究
村落神話や村落内身分の基底にあったのが、村落財政です。中世の村落財政は、荘園の現地財政機構を継承し、それを村落独自の収入・支出システムに改変して成立しました。中世の村落財政は、村落内身分などの村落生活全般の基盤であり、村落神話や村落祭祀儀礼を維持する村落祭祀と不可分な形で運営されていました。この村落祭祀のありかたとその変化を具体的に解明すべく、研究をすすめています。また村落財政を維持し正当化している社会的な意識思想を「ならかしの論理」と名づけ、この論理の特質の解明にあたっています。「ならかしの論理」は、徳政などの事象とも通底しています。中世民衆の社会意識を解明するだけでなく、前近代社会のもつ社会的な合意体系のありかたを明らかにするためにも、「ならかしの論理」は重要な研究テーマです。
(4)村落文書の研究
以上の研究の基盤となるのが、村落文書です。研究の素材としてだけではなく、独自な研究テーマとして、村落文書のありかたを研究しています。いまは村落文書の署判のありかたに注目して、村落文書の独自な世界とその論理を追求しています。
(5)そして…
以上の研究を基盤として、自分なりの村落史・民衆史を描くことができれば……と思っています。
主な論文・著書
(1)『日本中世村落内身分の研究』、校倉書房、2002年
(2)『村落内身分と村落神話』、校倉書房、2005年
(3)『日本の村と宮座―歴史的変遷と地域性―』、高志書院、2010年
(4)『中世村落と名主座の研究―村落内身分の地域分布―』、高志書院、2011年
(5)『日本中世村落文書の研究―村落定書と署判―』、小さ子社、2018年
(6)『中世村落の文書と宮座』、小さ子社、2023年
(7)「『看聞日記』現代語訳」、『米沢史学』30号・『山形県立米沢女子短期大学紀要』50号・『生活文化研究所報告』42号、2014年以降、毎年連載中
所属学会
歴史学研究会、日本史研究会、歴史学会、歴史人類学会、日本中世史研究会、 筑波大学日本史談話会、東北史学会、東北中世史研究会、米沢史学会社会活動
(1)日本学術振興会・特別研究員等審査会専門委員及び国際事業委員会書面審査員、2011年8月1日~2013年7月31日(2)山形県立米沢女子短期大学公開講座「中世~近代の史料と社会」第1回「源平争乱の兵力と戦い方」、於山形県立米沢女子短期大学、2016年6月1日
(3)上山城歴史講座「前田慶次道中日記を読む」、於上山城郷土資料館、2016年9月10日